真実を握り締めたい

あたしは何も持ってないなあ。伝えたいことをしっかり伝えられるだけの言葉を知らない。ひとりで生きていくだけの力やお金やどんなものにも揺るがない強さや誰かに手を差し伸べる優しさも、きっとなんにも持ってない。あたしひとり、ここに立つのが精一杯で、そしていつも身勝手なことばかり願っている。いわゆるお金持ちの家に生まれてさ、とても恵まれた生活をしてきたと思う。でもねー、お父さんとお母さんが笑い合うとことかもっと見たかった。二人は幸せなんだって実感したかった。あたしが見逃してきただけかな。期待されてたピアノや才能あるだなんて言われてたバスケットだって。どっちも結局のところ投げ出して。それはいつだって今自分のやりたいことをやるためだったけど、やりたいこと、やれてきたかな。あたしは何を手に入れてきたかな。あともう一ヵ月もしないうちにあたしは十代じゃなくなって大好きだった人の歳を追い越す。それは何となく不思議で寂しくてそして少し怖い。何も変わらないよ。二十歳になったところで。好きな歌を聞いて、働いて、勉強して、ギターを弾いてうたを歌う。たまに誰かとお酒を飲んで笑う。ああ何も持ってないなんてこと無かったかもしれない。でもたまにどうしようもなく寂しくなって怖くなってイライラしてひどく心がざわつくんだ。なんでかな。何も変わりやしないんだよ。あー違うな、変わって欲しいんだよ。世界が引っ繰り返ってほしいんだ。


十代はいつか終わる、生きていればすぐ終わる。割り切れるもんなど何一つ無いんだよ、唄うしかないんだよ、みんな自分の唄を。